俺はモテる男なのか...それとも
セレクトゴルフの女性社長は、綺麗な人だった
でも気の強い女性でもあった
仕事の進捗で会ったとき、とてもやさしく接してくれた
納品直前に、女社長は、俺に独身か否かを聞いてきた
その時、婚約者がいると言ったとたん、態度が変わった
もし独身だって言ってたら、迫られたんだろな
ちょっと怖い人だったから...俺は苦手だった
ー
うちのカミさんの友達には、俺の事をイケてると言ってくれてる人が数人いた
カミさんに対するおべんちゃらだとは思うが...
ひとり、気になる人がいた
うちに来た人で、部屋に入るや否や、正座して三つ指をついて挨拶した
そのとき彼女のゆったりしたブラウスの中の、かわいいふくらみが目に入った
下着を付けてなくて、乳首が見えた
その人は綺麗な人で、髪もサラッとしてて、凄く得した気分になった
見えた途端、俺の下半身が反応した
ー
高3の時、頭を怪我して運ばれた病院に通院してた時、包帯替えをする俺のそばで見守ってくれてた看護師さんがいた。その人は、俺が処置室にいくたび、見に来ていた。俺よりも一つか二つくらいしか歳が離れてなさそうな幼い感じの人だった。
ー
大相撲ライターの佐藤祥子さんは、平松さんとも懇意にされている方
忘年会だったと思うが、平松さんに誘われて参加した
所縁有る人たちと食事のあと、恒例のカラオケに行った
終わって帰るとき、祥子さんが俺に向かって何か言った
「あ〜むちゃくちゃ、キスしたい」と、俺には聞こえた
えって聞き返すと、顔を背けてしまった
ー
中学の時、バレー部の仲間とふたり、レシーブ練習をしてたとき、体育館の二階部分で下級生の女の子が二人、見物してた。俺がフライングレシーブを決めたとき、拍手してくれた。
その子たちは、しばらく練習を見てくれていた。その都度、拍手をしてくれた。
「すごい!上手!」っていう声も聞こえた。
こういうことされると、やる気になるっていうか、ええかっこしいになってしまう。
ー
中学時代
中三のときに久保ゆみ子という子を好きになった
中二の時、ちょっとしたことで、この人と疎遠になった
俺の事を避けるようなことが度々あって、心象はよくなかった
しばらくは、どうでもいい存在だったけど、
機械体操部で躍動する彼女の姿を見たとき、
その姿にときめいてしまった
中三ともなると、女性らしい体つきになってきていて
チラッとみるだけで、ドキドキしてしまった
でも過去の事とはいえ、自分の心の中にある彼女への気持ちは消えることはなかった
彼女の事を見る事はあっても、それ以上のことはなかった
かなりの秀才だった彼女に、愚才だった俺は近づきたくなかった
他の人と話したりするほうが、俺には心地よかった
このまま何もなく卒業するんだと思っていたけれど...
中学卒業待間近になって、彼女の視線を感じるようになった
まさかとは思っていたけど、確かに見られてた
彼女は俺に対するわだかまりがあったはずなのに、
明らかに、俺に好意的に接してくれた
俺は彼女に対して関わりあいたくないという気持ちがあったから、
なるべく近づかないようにした
彼女からの軽いアプローチも、あっさりと受け流してしまった
でも俺は、彼女が俺の事を思ってくれてるのが分かって、ちょっと嬉しかった
高校は別々になったけど、俺は彼女の事を思いつづけた
素直な気持ちで接していれば...今更だけど...
ー
市川時代の本プロに、先生のファンという女の子が来た
先生は不在で、俺が相手をした
不慣れな対処ではあったが、帰るとき喜んでくれた
話をしてるとき、俺は漫画をかいてるかどうかわからない、電気屋になるかも...なんてことを言うと
電気屋なんかになるな、漫画家になれって、言ってくれた
そのあと、本プロの入り口前で、その子らしい姿を見かけた
リュックを背負ったその子は、入り口を見上げて、しばらくしたあと、そこから去った
ー
市川時代の本プロに、事務所清掃等をやってくれる千春さんという人がいた
その人とは結構話したりして、懇意にしてくれた
バイクで、自宅マンションに送ってあげたりした
部屋に上げてもらって、コーヒーを一緒に淹れたりした
進展はしなかったが、俺が好きになった人の一人ではある
ー
バイクで事故を起こし、大けがをして運び込まれた病院で、先生のファンだという看護師の方と出会った
その方は、かなりの美形で、その病院内では、かなり目立っていた...
神経の損傷で、足先の痛みが激しく、毎夜、眠れない日々だった
ある夜、あまりの痛みにナースコールで看護師を呼んだら、その人が来た
丁度その日、当直だったようだ
鶴ケ崎笑子さんというその人は、痛み止めを懇願する俺をなだめ、足をさすってくれた
痛み止めは一時的なモノなので、癖になるとよくない...
眠れないなら、話し相手になるからと、長時間、そばにいてくれた
病院業務は、かなりのハードワークなのに...
疲れた顔なんか全く見せず、俺に対応してくれた
あの人の優しい笑顔に、ものすごく癒された
話している間、俺は夢見心地でベッドにいた
他愛もない話を続けた気がする...
話している間も、笑顔で合いの手を入れてくれたり、話の内容への受け答えをしてくれて...
そのときの対応は、足の痛みを忘れるのに充分だった...
どのくらい話しただろう、長くなりすぎて、俺が気を使ったほど...
こんなにいい気分になったのは、入院して初めての事だった...
痛くて、眠れなくて、イライラが募って...病院生活にも嫌気がさして...
そんなとき出会った鶴ヶ崎笑子さんは、俺の女神...
ベッドの横で、俺と話した鶴ケ崎さんに、思いを馳せたのは当然の事...
こう言う人を、伴侶にできたら...なんてことも、頭をよぎったし...
相変わらずの足の痛みを言い訳にして、何度か、ナースコールボタンを押そうとした...
でも、俺は呼ばなかった...
呼びたくて、会いたくて、どうしようもない気持ちであっても、我慢した
俺一人の看護師さんじゃない...独占するわけにはいかない
彼女はいつも、すぐそばにいる...看護師詰め所にいる...
近くにいても、遠い人...俺の手の届かない人...
かなりの長期間入院したが、話をしたのはあの日の夜一回だけ...
退院と同時に、鶴ケ崎さんとはお別れとなった
気持ち的に辛かったけど、いい思い出をくれた人であることは確かだった
ー
市川時代、事務所のみんなで、近くのスナックに行った
その時、先生の知り合いの加代さんという人も一緒だった
奥さんのアシさんたち何人かも同席した
奥さんのアシさん(女性)が男の話をした時、なぜかキスの仕方を話だし、横から加代さんが話に加わって、キスってのは、こうやるんだよ!とか言って、
横に座ってた俺の顔を両手のひらで挟んで、俺にキスをした
これには皆んな、ぶっとんでた
なんせ、いきなりブチュ〜だったから
そのあと皆んなに、何で俺?って救いを求めた
ー
奥さんのアシさんのひとり、戸渡真理さん
自宅に行って、ネットワークのセッティングの手伝いをした
当時はPC(Mac)でのインターネット黎明期で、設定が難しかった
同じような状況での設定を、俺は経験していたので、手伝いを頼まれた
終わった後、食事をごちそうになった
幸せな時間を過ごすことができた
真理さんはバツイチで出戻りだった
優しくて気遣いのできる彼女に、想いを寄せてしまった
ー
奥さんの臨時のアシ、鈴木詢子さん
市川時代の本プロの事務所に、奥さんの臨時アシとしてやってきた
俺の机の目の前で、一緒に仕事をした
物腰が柔らかく、笑顔の魅力的な女性だった
先生から購入したマンションのリフォームが終わった直後、奥さんと二人で見に来てくれた時、奥さんが彼女に、一緒に住んじゃえば...なんてことを言ったもんだから、彼女も俺も苦笑いするしかなかった
俺はうれしかったけど...
ー
高2の時、ひとつ下の学年の子に告白された
河西マキさんという人
友達からの代理告白だったけど、俺は嬉しかった
女性からの告白なんて初めてだったから、かなりドギマギした
俺のほうから想いを寄せた女性は多かったけど...
工芸は男子校みたいなものだったから、女性とのふれあいなんてなかった
漫画愛好会の女子部員は四人だった...四人とも一つ下の下級生
男子部員は漫画やアニメの事を討論してた
女子は女子で、タロットカードをやったり、漫画の話をしたり...
教室で漫画を描いたりはしなかった
ふざけあったりして、まともな部活とはいえなかったが楽しかった
楽しい時間を過ごしてる俺の事を見て、何かを感じてくれたんだ
何人かいるなか、俺を選んでくれた
俺なんかより、いいだろうと思う奴がいたろうに...
告白された日の下校の時、一緒に帰った
俺のどこがいいって思ったの?って聞いた気がする
その返事は...覚えてない
なんか舞い上がってて、会話が頭に入ってこなかった
好きな漫画の話とか、漫画愛好会に入ったきっかけとか、
他の奴の印象とかを、話せばよかった...
どこの科さえも知らない、というか覚えてない
バレー部からの復帰呼び出しさえなければ、もっと進展してたはずだけど
もっともっと話せばよかった...
女性の扱い方を知らない、頭の悪い男だ、俺は
相手の事を聞いてあげて、自分と重なるところがあれば、膨らませて話してあげる...
それくらい気の利いた会話をしなきゃ
この人だけだ...俺のことが好きだと意思表示してくれた女性は...
こういう人を大切にしなきゃいけないのに、俺はできなかった
俺はもっと、自分の外見を意識してなきゃいけなかった
俺は自分がどう見られているのかなんて、考えもしなかった
客観的に見てどうなのか...俺なんか大して男前でもカッコよくもない
それをもっと認識して、相手に対してあげなきゃいけない
声を掛けてもらえるなんて、とても有難いこと、光栄な事
そういう思いで、態度で接していれば、違った結果になったはず
考え方次第では、マキさんが運命の人ってことにもなったかも...
ー
高校入りたての頃
電車通学での話
電車で帰る途中、突然声を掛けられた
「楠さんと、すごいんやってね」
声の主は佐藤薫だった
屋島中学の、同学年だが違うクラスの人だった
楠さんというのは屋島中学の同級生で、漫画が好きで、よく話をしてた
朝の通学電車の中で、俺と楠さんが、たまたま同じ車両の同じ場所に乗り合わせて、つたない会話をしただけなのだが...
それを、どこかで見たのか...えらい話の膨らませよう
佐藤薫という人は、ボーイッシュで顔は小麦色、ちょっとした美人ってとこか
背の高さは、俺とどっこいで170センチくらい...
スタイル抜群の女性だった...テニス部だったと思う
ちょっと早熟な感じの女性で、男ならその姿を追っかけて見てしまうはず
でも佐藤薫とは、話をしたことがない...と思う
この話と同じような出来事が、俺の気にしてる脇明美さんからの突然の声かけ
脇さんは、ある日の集会場所に向かうバスの中で、俺と脇さんの学友でもあるヘボピー(松尾)さんとが、座席に座って仲良く話してた...ということの声掛け
なんで、話をしたことない人が、突然俺に話しかけてくるんだろ...
俺がイケメンだったら、それもわかるけど...
ホントに、よくわからん考えの人が多い
それとも..
二つのケースに共通して言えることは、俺と関わった人(話をしてたとか)を、引き合いに出してくるという事
佐藤薫の場合は楠満代 →楠さんと凄いんやってね...
脇明美の場合はヘボピー →ヘボピーと仲良かったね...
そのあとの言葉がないから、俺からしたら、だからなんやねん...となる
引き合いに出した人たちは、俺とはただの会話の相手
彼氏彼女の関係じゃない
俺が悩むのは、二人ともイケてる女性だという事
不細工やったら、こんなこと考えんやろな...失礼な話
俺みたいなのに声かけて、どういう反応するのか(自分に対して)ゲーム感覚で楽しんでるんじゃないのか?
俺は遊ばれるタイプの男なんかな~そんなエエ男でもないのに
掛けた言葉の真意が分かったら、絶対結果が変わってくる
もしかしたら、佐藤薫とエエ仲になってたかも...
もしかしたら、脇明美とエエ仲になってたかも...
ホントにあとちょっとの一言が...足りん
二人とも自分勝手な発言だったんやって...しかも言葉足らず
おかげで俺は、悩む必要のないことで悩んでしまう
ま、俺の性格やからしょうがない
なんにしても...縁がなかったいうこと...それだけ
ーー
SNSで気になる発信を見つけた
発信者は若い女性で、その内容は...
気になる男性に、女性が声掛けをするとき
その声かけ内容が、どういう意味なのか...というもの
「ヘボピーと仲がよかったね」
他人を引き合いに出して、男の反応を聞こう、知ろうとする声かけ...
友達と仲が良かったということを、自分にも重ねたい...つまり
自分とも仲良くしてほしい...もしくは自分とだけ仲良くしてほしい...
そういう意味なのだ...女性というものは、そんな風に考えてモノを言う
声かけされた時は、まさかそんな意味合いだとは思いもしなかったから、
「なにそれ」とか、素っ気ない返事をしてしまった
もし、こういう情報を知っていたら...
脇さんへの返事は違うものになっていたはず
どうして俺に声を掛けたのかが知りたくて、脇さんと話をしてたはず
そうすることで脇さんの本心を聞けると思うから...
脇さんが、俺への想いを持ってくれていたのなら、俺はそれを受け入れる意思表示をすると思う
俺なんかを、恋愛対象としてくれる脇さんのことを、分かってあげたいから...
俺も脇さんの事が好きだと打ち明けてしまうに違いない
ー
上京したての頃、西荻窪の荻山荘に住んでいた時、生命保険の勧誘があった
部屋で休んでいるときに、生保レディーが訪ねてきた
いきなりだったので断ったが、妙にしつこく、後々のためにプランの説明だけでもお願いすると言われ、部屋に入れた
いろいろな保険のプランを説明されたが、薄給の自分には無理なので断った
支払困難になるのは目に見えていたので、強引な事はしなかったが、そのうち時期が来れば連絡が欲しいと言ってきた
やっと解放されると思っていると、自分がどんな仕事をしているかを聞いてきて、漫画家のアシスタントをやってると言うと、凄く目を輝かせて色々聞いてきた
描いたものがあれば見せてほしいというので、渋々見せた
すると、その生保レディーは、漫画を描くなら漫画を読むだけじゃなく、小説も読んで勉強しなきゃいけない...というアドバイスをしてくれた
描いた漫画が、まるでなってない...そんなニュアンスの批評をもらったような気がする
その時は、分かったようなことを言う人だな...と、思ったが、今になって思うと、まったく知らない自分に、仕事とは関係ないことで意見を言ってくれたことが、凄く有難いことだった
ー
アニメックというアニメ情報雑誌の、サークル伝言板にて見つけたサークル勧誘案内
北海道の釧路の人で、佐々木操という女性が発起人のサークル会員募集案内
たまたま、そのページの案内情報を見て、いくつかある誘いの中から選んだ
ほぼ高校生世代の人がサークル会員募集の発起人なので、年齢のいってた俺としては、ちょっと躊躇するところではあったが、応募に踏み切った
そのサークルはよろず...を謳っており、固定アニメのファンサイトというのじゃなかったことが入会を決めた理由だった
暑苦しいイラストを送ったのはいいけれど、受け入れてくれるかどうか
たぶん女性中心のサークルになるだろうから、俺のことをどう思ってくれるのか...
駄目なら駄目でもいいやって...期待しないで返事を待った
操会長からの返事は、入会してもらえると嬉しい...と
男性会員は希少価値があるらしく、是非にと懇願する返事をもらった
この返信が、操会長の人柄を判断する最初のもので、これ以降の返信は、操会長の人柄の良さを増幅させるものだった
縛りのないサークルというのが気に入って、アニメとはあまり関係ないイラストを送ったりした...女性の多いサイト特有のイラストや文章があふれる中、俺のものは異彩を放っていたが、操会長は、とても喜んでくれていて、もっと描いてほしいと要求してくる始末
描いたものを送るたびに、優しいコメントをくれた...ともすれば、暑苦しい場違いなイラストやスト漫ともとれるようなものに、温かい言葉をかけてくれた
会誌が1号出るのに半年かかったが、一生懸命取り組んでいるのが見て取れたから、待つのは苦ではなかった...入会2年後に、やっと4号まで出た...1号発行の頃、会員数は十名ほどだったけど、4号の頃になると五十人を超える大所帯となっていた
サークル事務局に送られてくるイラストやカット、スト漫、エッセイ、その他いろいろな記事なんかが、かなりの数になったと思う...それを編集して冊子を作り上げるのだから、かなりの労力が必要であることは目に見えている
その労力が操会長の体を蝕んだのか、体調不良を手紙にしたためてきた...つとめが変わってから体調が悪い...と書いてあったのだが、変わったことから人間関係に悩んだことでなのか、本当に体調自体が悪いのかは判断できない...
手紙の内容とは裏腹に、最後は笑いで終わらせてはいたが、俺には強がっていると思えた
遠く離れた地(埼玉と北海道、釧路)なのに、俺に体調不良を訴えてきた...後々知ったのだが、自身の体調不良を異性に訴えるのは、まず知ってほしいのと、心配してほしい、癒やしてほしいという気持ちがあるかららしい...その手紙をもらってからすぐに、病院での治療を勧める返信をした...その後、連絡することはなかったが...もっともっと心配してあげればよかった、かまってあげればよかったと後悔することになった...
会ったこともない遠い地の俺に、自身の弱みを訴えかけてきた...サークルの会員としてというよりも、話せる異性として接してくれてた...そう考えたとき、操会長のことがすごく身近な愛しい人になってしまった...もちろん俺の一方的な片想いではあるが...操会長の手紙を読むたびに、もっと身近に接してあげればよかったと痛感する
編集スタッフのコメントなんかを見ると、優しい人で頼りにされてるっていうのがよく分かった...操会長の人柄の良さが見て取れて、好意を持つ要素となった...長い年月が過ぎて振り返ってみても、サークルの中心人物としてしっかり動いているし、信頼関係もある操会長が素晴らしい女性であると認識できる...そんな人を、俺はなぜ大事に思わなかったのか...操会長は北海道の釧路で、俺は埼玉...遠距離だからダメだって思ったのか...大事に思う、大切だって思う人が遠くにいるからってだけで諦めたのか...
歳をとってから操会長の良さをわかるのも、若い時の俺は人間ができていない証拠...今の俺が40年前に転生できたら、操会長との対応も違ったものになる...操会長の事を、かなり意識した態度を取るはずだから、もしかしたら俺は、操会長にアプローチをかけると思う...親睦会なんかがあれば釧路まで行って、あわよくば操会長と親睦を深めるなんてことにも...それこそ「転生したら操会長の夫だった件」みたいな...
操会長には、数人のP・Fがいるようだった...その人達のやり取りの中に、俺の話題があっただろうか...会員に、すごく暑苦しい絵を描く人がいる...なんて...その男性会員が自分のことを心配してくれてて、嬉しいんだよ...なんてノロケてくれてないかな...俺と操会長との恋話で盛り上がってないかな...操会長のことを心配する俺が、実は操会長のこと好きなんじゃないの?好きだから心配するんだよ...絶対そう...だなんてことに、なってないだろうか...ありえないことじゃないと思うけど...そんな妄想をするくらい、俺は操会長のことが好きになった
操会長は、サークル活動以外のことでも俺に関わりを持とうとしてくれた
操会長は俺の描くもの...スト漫、イラスト、近況報告等に、関心を示してくれてた
それだけでも俺は嬉しくて仕方がなかったのに、自身の体調不良を俺に伝えてきたことが、不謹慎ではあるが嬉しい気持ちにさせた...自分の今の気持ちを俺に伝えたかった...聞いてほしかった...辛いことを分かってほしかった...遠く離れた地の俺に、分かってほしかった...言ってもどうにもならないことだって分かってるはずなのに...
そう考えると、操会長は俺のことを、サークルの会長と会員という立場じゃなく、男と女というくくりで接してくれた...そうとれてしまう
サークルの中での俺という会員が、何らかの理由で操会長の心に刻まれたんだろうか...
そうでなきゃ、わざわざ俺に手紙を出すことなんてないと思う...俺へのお礼をするためにだなんて書いてあったけど...操会長の性格なら、そういうこともするかな...でも俺は、俺に対する特別な気持ちが、手紙をくれたことに繋がったと思いたい
操会長は、俺に何らかの想いを抱いてくれた...その気持が、自身の体調不良を遠隔地の俺に伝えた...俺に対する恋心...それがあったと思わずにはいられない操会長からの手紙
あの手紙は、俺に宛てた操会長からの恋文だった...それを分かって受け止めてあげるべきだった
俺の本当に大事に思う人になったかも知れない操会長...
生涯の伴侶として選んだかも知れない操会長...
ーーーーー
何人かの女との出会いはあったけど
結局は、その女と付き合えるか...そのあと抱けるかどうか
男は女を抱きたい生き物だから
女とやれるかどうかになってくる
エエなって思った女とは、やりたい
でも、簡単にはできない
やるってことは、責任問題にもなるから
遊びでって割り切れる女なら、やってもいいんだろうけど
そんな女、そうそういない
成人になってからなら、ともかく、未成年の時の女性との話ってのは、漫画みたいな甘酸っぱいストーリー...を連想するが、実際、俺にはそんな事は感じられなかった...その中でも、佐藤薫と脇明美に対しては一方的な感情告知...相手の気持ちは関係なし...だからこっちは、一体何を言ってるんだ、この人は...となる
俺の方から告白してフラれる方が、後腐れがなくてイイ...性格上、出来ないけど
今になって思えば、明善高校の松尾さん...バスの中で仲良く話のできた人...この人が俺のことを気に入ってくれていれば、もしかしたらイイ仲になれてたかもしれない...ちゃんと話のできる人なら、意思の疎通だって割と簡単にできるかもしれない...宮尾の家からの帰り道で、あの時もし声をかけてきたのが脇さんじゃなく松尾さんなら...違った展開になってたはず...
矢葺恵子
東原明美、丸山可奈
白井一代、藤本和代
久保ゆみ子
河西マキ
ー
ー
今まで、何人かの女性を気にしてきたけど、大体の顔は思い出せる
でも、高校時代に気にした(であろう)人の顔が思い浮かばない
河西マキさんは代理告白してくれた人で、デートもした...告白された日に一緒に下校したことは覚えている
それなのに顔を思い出せない...代理告白した川村さんの顔は思い浮かぶ
漫研ベタの女性陣は、みんな顔が思い浮かばない
俺に声を掛けた脇明美さんも、その声かけのきっかけになった松尾さんも、俺の事を上げて下げた松浦さんも、三好さんも(みんな明善高校の人)誰も顔を思い出せない
何度か出席した集合で話したことがないのも、思い出せない原因だろう
全く話さなかった訳ではないけど...集会での出来事は、ところどころ覚えてる
深い認識じゃなかったから思いだせないんだろうな
工芸の漫画愛好会仲間以外、思い出せない
ーー
河西マキさんは俺の事を気にかけてくれたが、友人を介しての代理告白だった
そう考えると、本人からの声かけという脇明美さんが、俺の事を気にかけてくれた最右翼ということ
集会で目にしたことはあっても、話すことはなかった
その時、俺の事をどんな目で見てたのか...わかるはずもない
俺への声かけの時の言葉が、あまりにもわかりづらい(と俺は感じた)
実際、何を言ってるのか理解に苦しんだ
「バスの中でヘボピーと仲よかったね」
バスの中で、俺とヘボピーさんが仲良く話してるのを、脇さんが見た
確かに、その通りではあるけれど、そのことを俺に言わなくてはならなかった訳とは一体なんだったんだろう
男と女...そういう視点から考えると、俺と仲良く話していたヘボピーさんへの嫉妬から、脇さんが俺に声を掛けた...そう取るのが自然だと思う
だとしたら、俺が思うのは...脇さんは俺に気があった...
そんなこと、ありえないって俺は思うけど...そう取れてしまう
言った言葉の後に、もう一言あれば...
漫研ベタの肉筆回覧誌7号の編集は、脇さんと松尾(ヘボピー)さん、松浦さん、宮尾が担当した
冊子の掲載順で言うと、四番目が脇さんで、その次が俺の作品、その次が松尾さんの作品だった
脇さんにしてみれば、自分の作品を読み終えれば、いやでも俺の描いたものが目に入る
俺の漫画は新人賞の候補だった
俺は会誌ユニオンの近況報告で、ギャグマンガを描いていると告知してた
それが、蓋を開ければ、サイレントヒューマンドラマだったもんだから、貰った批評は予期しないものだった
俺が描いたものとは思えないと...かなりの高評価だった
脇さんたちは編集に関わってるから、いち早く俺の漫画を読んでるはず
宮尾の家で、完成した肉筆回覧誌を何人かで閲覧した
サークル内で一番絵のクオリティーの高いのが脇さんの作品
その後の作品が俺のもの...絵は永島慎二ふう
回覧しながら、宮尾は、俺がこんなの描くとは思えない...とか言うし...
ギャグ漫画だと思ってたら...意外なものだったから、俺に対する見方が変わった?
俺の漫画に対する皆の評価から、俺に対して何かを感じてくれた?
俺と松尾(ヘボピー)さんが、バスの中で仲良く話してるのを見て、俺に何かを思ってくれた
その思いを持ったまま回覧誌を閲覧し、俺の漫画の評価を耳にして、俺に対して、何らかの感情を抱いてくれた
それが高じて、俺に声を掛けた...
俺の事を気にかけてくれたのかな...脇さんは...
俺はそうとは取れなかったから、素っ気ない返事をしてしまった
俺がもっと、言葉に対する洞察力に長けていれば、かけられた言葉に対する返事の仕方も変わってたはず...
話をしたことのない脇さんだけど、俺に抱いてくれた思いが、俺への声かけとなった
歳を取って、俺はそう解釈した
そう解釈したあと、脇さんに対する俺の気持ちは...
なぜもっと、俺に分かるように言ってくれなかったの...言葉を掛けるにも勇気がいったでしょう...勇気を出して言ったのなら、もっとわかりやすく、伝わる言葉にしてほしかった...
漫画のサークルなんだから、漫画に関する事で声をかけてほしかった...そうすれば、すんなりと会話することができたはず
言葉を掛けられる前まで、俺は脇さんに対しては、何の感情も持ち合わせていなかったんだから
ただのサークル仲間...それだけだったのに
一瞬の声かけのせいで、俺はしなくてもいい後悔をするはめになってしまった
後々の結果がどうであれ、俺への想いを持ってくれてる脇さんになら、しかるべき対処をしたはず...
なぜなら...脇さんは俺にとって好印象な女性だから...彼女が描く絵柄から受ける印象だけではあるけど、思いを寄せることができる...そんな女性だった
脇さんは俺のことを、どういう目で見てくれてたんだろう...どういう思いを俺に抱いてくれていたんだろう...
名前を言って呼び止めて、俺に声を掛けた脇さん...
俺に声を掛けるに至った脇さんの心情...
たくさん会話をして、お互いの事を少しでもわかる、分かり合える
そうでもしない限り、気持ちが通じ合う事なんかない
あとは友人を介して知ること
俺とヘボピーさんのバスの中での会話が、脇さんの声かけに繋がったのは明らかだから、ヘボピーさんに、もっと絡んでもらえばよかった
あの時、俺とヘボピーさんが一緒に帰れば、脇さんは俺に声を掛けることはなかったんじゃないだろうか...それとも...俺とはいつからの付き合いなのかと、ヘボピーさんに聞いてきたかも...そうなったのなら、ヘボピーさんは黙っていないだろうし...そんなことを聞いてきた脇さんに対して、俺の事を引き合いに出すかもしれない...そうなれば、俺にとって違う結果となったはず
その後の集会に行った時、俺は頭に包帯という姿だった...卒業式を間近に控え、学校には、ただ登校する日々だった...雨の朝、いつものように自転車での登校中に、ちょっとしたことで頭に大怪我をしてしまった...髪の生え際を13針縫うケガだった...そのせいで、卒業証書を病院で受け取るはめに...ケガの具合が落ち着いた時、漫研の集会に出た...頭に包帯をグルグル巻きという出立ちでの参加だったから、みんなから好奇の目で見られた...女性は近寄ってこない...こんな姿なら仕方ないかって思ってた...寄って来ないんだから男としか話さなかった...その時、俺の心の中から脇さんのことを消そうと思った...声掛けしてくれた脇さんだったけど、その後の俺の塩対応に、俺の事を見限った...俺はそう取ったから、俺ももういいやって気持ちになったし...俺のケガに対しても、何の反応も無かったし...
嫉妬?相手のヘボピーさんと、もっと親密になっていれば、口出しさえできないような状況になってただろう
松尾(ヘボピー)さんは、同じ女子高仲間の人と比べて男の浮いた話とかがなく、バスの中で話したときも自然と会話できた
俺がもっと松尾さんに関わっていれば、こんな思いをしなくてすんだのにと、ちょっと後悔している
ーーー
SNSで気になる発信を見つけた
発信者は若い女性で、その内容は...
気になる男性に、女性が声掛けをするとき
その声かけ内容が、どういう意味なのか...というもの
「ヘボピーと仲がよかったね」
他人を引き合いに出して、男の反応を聞こう、知ろうとする声かけ...
友達と仲が良かったということを、自分にも重ねたい...つまり
自分とも仲良くしてほしい...もしくは自分とだけ仲良くしてほしい...
そういう意味なのだ...女性というものは、そんな風に考えてモノを言う
声かけされた時は、まさかそんな意味合いだとは思いもしなかったから、
「なにそれ」とか、素っ気ない返事をしてしまった
もし、こういう情報を知っていたら...
脇さんへの返事は違うものになっていたはず
どうして俺に声を掛けたのかが知りたくて、脇さんと話をしてたはず
そうすることで脇さんの本心を聞けると思うから...
ーーー
半世紀も経ってから、俺に声を掛けてきた脇さんの事を気にしてしまう
掛けた声の意味が分かったから...
俺の事を気にかけてくれてたんだったら、もっと伝わる言葉を選んでほしかった
それか、かけた言葉に繋がる言葉がほしかった
言葉の意味を分かれっていうのは、俺には難しい...言葉への洞察力が俺にはない
ーー
ーー
宮尾の家からの帰り...突然、後ろから声を掛けられた
「ヘボピーと仲よかったね」
声の主は脇明美だった
いきなり何を言ってくるんだ、この人は...かけられた言葉の意味が分からず、俺は困惑した
「たまたま一緒だっただけ...」
俺は素っ気なく答えた
バス停に向かって歩こうとしたとき、あることが気になって、さっきの声の主に聞こうと歩きを止めた
「あのね脇さん、ちょっと聞きたいんだけど...」
「なに?」
「あの肉筆回覧誌、編集したの宮尾と脇さんたちだよね」
「そうだよ...」
「あのね、大したことじゃないんだけど...あの会誌の掲載順序、誰が決めたの?」
「私たちで話し合って決めたんだよ」
「そっか...」
「なんか、気になった?」
「俺の描いたヤツ、最初のほうにあったけど...確か前から4、5番目あたり」
「うん、私の漫画の次...だね」
「俺、新人だから、もっと後ろのほうかと思ってたんだけどね...前のほうにあったから、どうしてだろって...」
「松下君の漫画、新人賞の候補作だからだよ...」
「だとしても、俺からしたらちょと気になって...」
「えっ何が気になるの?」
「脇さんの漫画の次っていうのがね...」
「私の漫画の次だから、気になるの?どうして...」
「あのね、脇さんの描いたのって、凄い評価高いの知ってるでしょ?俺も評価見たんだけど...絵がプロレベルって...」
「それが何か...いけなかった?」
「いけないとか...じゃなくて、そういうレベルの脇さんの漫画のすぐ後に、俺のへたくそな漫画って...凄く目立つんだ...実際見ると、それがよくわかっちゃって」
「そんなの...気にする必要ないよ...松下君の漫画、評価高かったんだよ...だから前のほうにしたと思う...新人だからとか、関係ない」
「脇さんの作品が、あまりに綺麗すぎて...俺の漫画の雑さ加減が強調されて見えるんだよね」
「それ、考えすぎだよ...松下君の漫画...よかったもん...雑だとか、関係ない」
「よかった?脇さんがそういってくれると、なんかうれしい...そうか、逆もありって考えればいいか...」
「逆って、どういうこと?」
「俺の漫画が、脇さんの漫画を更に綺麗にみせちゃうってこと...」
「なにそれ」
「脇さんの漫画って、あの回覧誌のレベルをね、高くしてると思うよ」
「そうかな...」
「さっきも言ったけど、脇さんの描いたマンガ読んで、批評を見ればわかるよ...俺もそう思ってるから」
「ありがと...松下君にそう言ってもらえて嬉しいよ」
「あともう一つ、聞きたいことがあるんだけど...」
「なに?」
「脇さんて、描くとき、何使ってる?丸ペン?カブラペン?」
「ロットリングだよ...0.3ミリの」
「それで、あんな細い線で描けるんだ...細い線で綺麗に描いてるから、何で描いてるのか気になってたから...」
「最初は丸ペン使ってたんだけど、ロットリングのほうが使い易くって...松下くんは何使ってんの?」
「俺?俺はカブラペン...カブラペンしか使ったことない」
「そうなんだ...綺麗に描いてるよね...近況のイラストとか...」
「脇さんほどじゃないけどね...そういや、さっき脇さん、俺に声かけたよね...」
「...うん」
「あれって...どういう意味...ヘボピーと仲よかったって?」
「松下君...バスの中でヘボピーと仲よく話してたなって...」
「そんだけ?何か意味がありそうな感じだったよ」
「意味なんか、ないよ...そう思っただけ」
「それだけで声かけたの?俺に」
「いけなかった?だったらゴメンなさい」
「いや、謝られても...声をかけた本心が聞きたかっただけ...」
「...」
「俺、脇さんに声かけられて、内心びっくりしたんだから...だって、ほとんど話したことないんだよ、俺と脇さん...」
「そうだよね..話してない...」
「それなのに声かけてきたんだから、どうしてって思ってもおかしくないでしょ」
「...」
「ごめん...なんか言いづらそうだね...もう聞かないから」
「あのね...うらやましかったの...」
「...」
「松下君と話してるヘボピーのことが...うらやましくて...」
「それって、ヘボピーさんにヤキモチ焼いたってこと?」
「うん...だって、バスの中で凄く楽しそうに話してたし...」
「脇さん...あの時、俺とヘボピーさん...何話してたと思う?」
「なに?」
「俺ね、宮尾のところ行くの初めてなんだけど...松尾さん、行ったことある?とか、これから雨降るかなとか...そんなことなんだよ、話したことって」
「でも、仲良く話してた」
「なんか、面白おかしく話したっけかなぁ...そうだ、あのときね、途中から脇さん乗ってきたじゃない...俺、脇さんに席譲ろうと思ってたんだけど、凄く混んでたから譲れなかった...ごめんね」
「いいんだよ...そんなの...あのバスって塩江温泉に行くから、土日は混むの...ありがとう、気を遣ってくれて...瓦町で松下くんとヘボピー、待ち合わせしたのかなーって」
「松尾さんとはね...瓦町駅で、たまたま一緒になっただけ...ほら、始発じゃない...だから、松尾さんと待ち合わせたわけでもないし...脇さんが思ってるような仲じゃないから」
「そうなの?」
「そう!だから...脇さん、どうして俺に声かけたの?ホントの理由を教えてよ」
「...」
「やっぱり話せないか...わかった」
「あのね...私がヘボピーにヤキモチ焼いたの、わかったでしょ...意味わかるよね?」
「じゃあ脇さんは俺のこと......そう思ってるって事?」
「...迷惑かな...そうだったら、ゴメン」
「謝んないでよ、迷惑だなんて思ってないから...それより、どうして?さっきも言ったけど、俺と脇さん、話した事ないよね?」
「前から、ちょっと気にしてたの...私、あの回覧誌の編集に関わってたから、松下くんの描いた漫画見たときにね、ちょっとびっくりして...さっき宮尾君の所で肉筆回覧誌見てた時、宮尾君が松下君の漫画見て、松下君がこんなの描くなんて以外!って言ったでしょ...私とおんなじこと思ってるって...l
「ああ、そういや言ってたね」
「私もね、松下君はギャグ漫画描くんだとばっかり思ってたから...そうじゃなくてストーリーマンガだったから、ウソーって思って...編集始めた時から、何度も見返したんだよ」
「会誌のユニオンに、こういうの描こうと思ってるって近況報告に書いたたけど、全然毛色の違う漫画描いちゃった...そりゃ驚くよね」
「だからさっき、改めて見て...松下君って、こういうのも描くんだって...」
「俺の違う一面を見た!って感じ?」
「ユニオンの近況だと、ふざけてたり真面目だったり...よくわかんない人だな〜って...でもね、集会で会った時、覚えてる?ヘボピーの所で...」
「俺と増田が、脇さんとヘボピーさんと向かい合って座ってた...よね」
「そう...あの時ね、増田君と松下くんが何か話してて...私の事を見たの...」
「そういや増田と脇さんのことで話したかも...」
「その時ね、私の事で何か言ってるのが分かって、なになにって...ヘボピーにも振ったんだけど、結局何もわかんなくって...」
「大した事じゃないよ...たぶん...増田がね、脇さんの事、気にしてたのは確かだけど...」
「あの時のね、視線が忘れられなくて...」
「増田の?」
「違うよ、松下君の!」
「俺の視線?」
「松下君が...私の事を見て...笑ってくれたの...」
「笑った?...脇さん見て...俺が...?」
「覚えてない?笑ったんだよ...ニコって」
「笑ったっけ...覚えてない」
「その笑顔がね...私の記憶に残ってるの...」
「...」
「松下君とは集会で何度か会ってるけど、話してない...でもね、私、来てるかどうか確かめてたんだよ...」
「俺ね、脇さんのこと...すごく綺麗で丁寧な絵を描く人だなって...ユニオン見るたびに凄いなーって...脇さんのファンって人も何人かいたし...一度、話してみたいなーって思ってはいたんだけど...
でも、集会で見かけても話しかけらんなくて...何話していいかわかんなくて...あっ、嫌ってるとか、避けてるってことじゃないからね」
「そうなんだ...私の描くもの、そんな風に見てくれてたんだ
それでね、あの集会のときから、松下君のこと、気にするようになっちゃって...
さっき宮尾君のところで回覧誌見てた時も、話しかけたかったんだけど...」
「俺の漫画が変に目立つー!って言ってくれればよかったのに...」
「だから...そんな事言えないよ...漫画の事、話せばよかったなって...
そしたら、さっきみたいな声かけしなかったのに...」
「じゃあ、話してたら、あんな漫画描ける俺のこと、見直したって言ってくれた?」
「言ったかも...ギャグ漫画描く人だとばっかり思ってたからね...」
「そういうことで、俺のこと気にしてくれたの?」
「うん...そう...」
「脇さんみたいな人にそう思われて...俺、嬉しいよ」
「ホントに?本当にそう思う?」
「ホントだよ...ウソじゃない」
「よかった...声かけた後、松下君、なんか冷たかったから、嫌われたかと思っちゃった」
「あの時の声かけだけど...俺、意味わかんなくて、あんな返事したんだよ...ごめんね...解ってあげられなくて...もうちょっとわかりやすければ、よかったんだけどね」
「ううん...私こそゴメン...ちょっとテンパってて...あんなふうに、言っちゃった」
「そうだったんだ...でも、わかったから...脇さんの言いたかったこと
俺みたいなのに、声かけてくれて...ありがとう」
「わかってもらえて、嬉しい」
「でも...脇さん、増田と付き合ってたんじゃ...」
「そういうこともあったけど...今は何も...」
「そうなんだ...俺、どうすればいい?脇さんから声掛けてもらっても、どうしていいのか...こういう事に、縁がなくて...」
「松下君が...私のこと...気にしてくれるかどうか...好きに...なってくれるかどうか」
「それだったら...さっき脇さんに、俺のこと気にしてるって言われて、嬉しいって言ったから...これからは...脇さんのこと、絶対気にする...よ」
「ホント?」
「うん...だけどね...俺みたいなので、ホントにいいの...?」
「いいから声かけたの...そんなこと言ったら、私だってそうだよ...こんな私でいいのかなって...」
「脇さんはね、俺からしたら...高嶺の花...手の届かない人だって思ってたんだよ...」
「そんなふうに思わないで...私、手の届くところにいるよ」
「そうだね、脇さんはここにいる...」
俺は手を差し出し
「こんな俺だけど...よろしくね...」
脇さんは、少し照れながら俺の手を取り
「私こそ、よろしく...」
脇さんが、はにかんだ笑みを浮かべたのと同時に、俺も脇さんに微笑んだ
「それ!その笑顔...」
「脇さんの記憶に残ってるってやつ?」
「そうだよ...なんかね...優しいなって思ったの」
「ありがと...脇さんにそう思ってもらえて...なんかうれしい」
「その笑顔、私にだけ見せてほしいな...」
「え~脇さんにだけって...それは...」
「他の人にも、そうやって微笑むの?」
「礼儀としてはね...しかめっ面で話せないでしょ」
「私だけの笑顔って思いたい」
「脇さんて...独占欲強い?あのね...脇さんに笑顔見せるのと他の人とじゃ、思い入れが違うから...気持ちの入り方ってのがね、ぜんぜん違うよ」
「そう?そう思ってていいの?」
「当然でしょ!俺のことを気にしてくれてる脇さんに見せる笑顔は、俺も脇さんのこと気にしてるからって意味があるんだから...それこそ脇さんに対する礼儀だよ...脇さんにだけのね」
「それならいい...ねえ、手、繋いでいい?」
脇さんが俺に甘えるように手を出してきた
俺は脇さんに微笑みながら手を差し出し頷いた
俺の手を取ると、脇さんは恥ずかしそうに身を縮めて、一緒に歩きだした
「ホントによかった...松下くんに嫌われたんじゃなくて...」
「俺、そんなに冷たい態度だった?」
「うん...私、血の気が引いちゃったもん...」
「ええ~俺、脇さんにそんなひどい事したんだ...ごめん」
「ううん、もういいの...」
「言われて気づくなんて...俺ってひどい男だね」
「ひどくなんかない...私が好きになった松下くんなんだから...
そう思うなら、次は気をつけるとか、直せばいいでしょ...」
「脇さんにそう言ってもらえると...救われるよ...俺、直す努力するから...
せっかく脇さんが言ってくれたことなんだから、無駄にしたくないし」
「そうなの?私、役に立ってる?」
「うん、すごく...あのね...俺、脇さんのこと...どんどん好きになってきたよ」
「えっホント?」
「ホントだよ...ちゃんと俺のこと見てくれてるし...いろいろ言ってくれるし...」
「キツイこと言っちゃったら、許してね...」
「キツイこと言われたら凹んじゃうけど、原因があるわけだから...
それこそ直すとか、対処するとかすればいいんだもんね...
俺からしたら...ちゃんと言ってもらったほうが...いい...だって、脇さんが言ってくれるんだよ...俺なんかのために」
「俺なんかって言わないで...松下くんは、私が好きになった人なの!」
「わかった...ほら、今も俺に言ってくれた...俺の直すところ......また上がったよ...」
「上がった?」
「うん、脇さんの好きさレベルが凄く...」
「そんなに?...うれしいな...」
「でも、まだまだ上がると思うよ...迷惑かな?」
「迷惑なわけないでしょ!もう...」
「そうやってフクれるところ...かわいいね脇さんて...」
「えっ...」
「あれ?照れてる?」
「だって...かわいいだなんて...心にもないこと言うんだもん...」
「心にもないって...あのね、俺の好きな脇さんのことなんだよ...心にあるにきまってんじゃん!かわいいと思うから、かわいいって言ったの!」
「わかった...かわいいって言ってくれて、ありがと」
「好きになるとね...そう見えちゃうんだよ」
「なんか嬉しい...松下くんにそんな事言われると...恥ずかしいけど...嬉しいよ」
「こういう事言われるの、イヤなら言って...脇さんの言う通りにするから」
「いいの...松下くんになら、言われてもいい...私、嬉しいから...だから、もっと言って」
俺は笑顔で頷いた
「もっと前から...こんなふうに話せばよかった...脇さんのこと、高嶺の花だからって...自分で遠ざけてた...」
「私だって、話そうとして話せなかったんだから...でも、今こうして話せてるでしょ?」
「うん...自分にとって凄く大事な人を...失わなくてよかった...」
「ほんとに大事?私のこと...」
「大事だよ...すごく大事...そう思うくらい、好きになったよ...脇さんのこと」
俺は脇さんの手を、しっかり握り直した
「松下くん...」
瓦町行のバスが来た
「バスに乗ったら、すぐにお別れだね」
「そっか...ねえ、これから用事ある?」
「いや、帰るだけ」
「どこかでお茶しない?」
「いいけど...脇さん、どこかいいとこ知ってる?できたら、脇さんの家から遠くない所がいいんだけど...」
「そんな気を遣わなくていいよ...瓦町まで行けば知ってる所あるから...」
「分かった」
「ありがとね...気を遣ってくれて...」
「当然のことだよ...好きな人に気を遣うのって...」
脇さんが俺の片腕を、両腕で掴んできた
「もう...松下君って、凄くいい人じゃん」
「俺のこと、誰かダメだって言ってた?」
「ちょっと耳にしただけ...その人、人を見る目、ない」
「脇さんがいいって思ってくれてれば、それでいいよ」
乗り込んだ帰りのバスは混んでいた
俺と脇さんは、ちょっとした隙間に体を潜り込ませた
「混んでるね...瓦町まで辛抱しなきゃ」
「そうだね...」
俺は支柱を手で掴み、掴んだ腕の中に脇さんの体を入れて支えた
俺は脇さんに囁いた
「ちょっと窮屈かも知んないけど、もたれかかっていいからね...ちゃんと支えてるから」
脇さんは嬉しそうに頷いた
俺の空いた手を、脇さんは繋いできた
脇さんの体を抱き抱える体勢のまま、バスは走り出した
脇さんはバスの揺れに体を任せて、俺にもたれかかってきた
時折、脇さんは自分の頬を俺の肩口にくっつけてきた
バスの車窓を見ていると視線を感じた
見ると...脇さんが俺に視線を向けていた
目が合うと、脇さんは微笑んだ
俺も脇さんに微笑みを返した
その時バスが、ほんの少し強く揺れた
同時に、立っている人たちの体も揺れた
俺は脇さんの体を支える手に力を込め、もう一方の手で脇さんの体を包むよう支えた
脇さんを優しく抱きしめている感覚だった
俺に体を預け目を閉じている脇さんが、とても愛おしく感じた
揺れるたびに、俺と脇さんの体が密着し、お互いの温もりを感じあった
バスが瓦町に着いて、喫茶店に向かうとき
「さっきのバス、もうちょっと乗っていたかったな~」
「あんなに混んでたのに?」
「混んでたから、よかったの!松下くんとくっついていられたから...」
「そういや...脇さんの温もり...伝わってきたよ...
それにね、髪の毛のいい香りがして...」
「もたれかかっちゃって、ゴメンね...」
「いいんだよ...おかげで、脇さんのこと...すごく身近に感じられたし...」
「私もね...松下くんを感じられた
なんか...幸せな気分だった」
「そっか...また、好きさレベルが上がったよ...」
「そう?私も上がったよ...」
「よかった...」
どちらからでもなく手をつなぎ、喫茶店に向かって歩いた
脇さんが連れて行ってくれたのは、落ち着いた感じの店だった
「いい雰囲気だね...ここ」
「でしょ...よく来るんだよ」
「お仲間さんたちと...」
「そ!」
「一つ一つのテーブルが閉ざされた異空間みたい...」
「なんか、松下くんの使う言葉らしくない...」
「え、やっぱギャグっぽいこと言わなきゃダメ?じゃあ...
締切に追われたときに閉じ込められるタコ部屋みたい...」
「やっぱりギャグの人だね...松下君って」
「そうかな~ラジオの収録があったときも、そんな事言われた」
「ラジオの収録?」
「うん、工芸に来たんだよ...ラジオ番組の収録...そんときインタビュー受けたんだけど」
「何喋ったの?」
「毎日、漫画同好会で漫画描かないで、馬鹿なことばっかりやってますって」
「なんか想像できる...活動しないで、ふざけて遊んでばっかり」
「それを言ったらね、君は漫画同好会、地でいってますねって言われちゃって...」
「それ、放送で流れたの?」
「流れた...みんな聞いたって...しかも録音した人もいて...あー恥ずかしい」
「松下くんて、なんか目立ってるよね...工芸の漫画同好会で...」
「そうかな~目立つつもり、ないんだけど...」
「みんな、気にしてるんだよ...ほら、ユニオンの近況でも松下くんの名前、結構見るし...」
「そういや、あったな~丸漫の集会のレポート、たくぼけの書いたやつ...俺、そこには行ってないのに、何人かの卑猥な話に俺が加わってたら凄かっただろうな~なんて...」
「それだけじゃないよね...あのキャシャーンのパロディー...とかナショナルセブンとか、増田くんとか宮尾くんとかが、面白おかしく描いてた」
「きわものばっかだね...やっぱギャグ人間だ~俺って...」
「みんな好きなんだよ...松下くんのこと...」
「ホントに俺のこと...好きなのかな~」
「好きなんだよ...好かれるっていいことだと思うよ...」
「近況なんかでも、描く絵、ギャグ多いしな~」
「そんなのばっかりでも、ないじゃん...回覧誌の漫画みたいなのだってあるし...
次も、あんな漫画描くの?」
「まだわかんないけど...ああいうのに目覚めたかも...今度はサイレントじゃない漫画にしたいな~」
「期待してるよ...頑張って描いて」
「脇さんは、どんなの?ファンタジーもの?ラブコメ?」
「なんにしようかな~できてからのお楽しみ」
「お楽しみかぁ...脇さんの漫画って、安心して読めるから...楽しみにしてるよ」
「松下くんへのオマージュにしようかな...」
「脇さんがギャグ漫画描く?すごい楽しみなんだけど」
「違うよーギャグ漫画じゃない...あのサイレントマンガの...だよ」
「わかってるって...そうか、奇をてらってギャグファンタジーってのもありかな」
「なにそれ...やっぱギャグなの?」
「今はまだ、言えません...」
「言えないって...けっこう言ってるじゃない」
「どうしよっかな~」
明美が手を俺の方に伸ばしてきた
俺はその手を取って握り返し、明美を見つめた
「なんか夢見たい...松下くんとこうしていられるなんて...」
「取っ掛かりは、危なっかしい感じだったけどね...ついさっきだよ...こうなったのって......一時間も経ってない」
「すごく展開が早い...私ね、こんなになるなんて思ってなかった...松下くんに私の気持ち、伝われば...解ってくれればいいなって思ってただけなのに...」
「...脇さんと話したことないんだよ俺...それなのに、こうしてると、すごく前から...こうだったような...気がする」
「不思議だね...それだけふたりとも思い入れが強かったのかな?」
「俺もね、今こうしてると...そうだったのかな~って思う...気にして無いようで、実は気にしてたんだなって...俺の奥の方で...脇さんのこと好きだって思いが...あったみたい」
「それが出てきたんだね...出せたんだね...お互いに」
「そうだね...出せてよかった...」
「...よかった...私も出せて...ねえ、名前で呼んでくれない?」
「甘えてきたね...明美」
「だって、禎行のこと...好きだから...甘えたくなるの」
そういうと明美は涙ぐんだ
「ごめんね...嬉しくて...」
「俺も...嬉しいよ...眼の前に、明美がいてくれて」
「ねえ、これからちょくちょく会えるかな...大学行くようになったら、会えなくなるから」
「そうか、明美、進学だもんね...京都だっけ」
「禎行は就職だよね?」
「うん、地元でね...簡単には会えなくなるな~」
「会うとしたら、卒業するまで...今のうちだけ...」
「せっかく明美と、こんなに仲よくなれたのに...ね...」
「会える時に.逢いたいな..」
「そうだね...」
「明日は?」
「学校終わったら、運転免許の講習があるな...」
「それがある間は、会えないの?」
「そうだね...土日はないから、そのときは会える...はず」
「土日か~卒業前だから、いろいろ用事があるかも...」
「会うの...難しいね...」
「なんか...淋しくなっちゃった」
明美が俺の手を強く握ってきた
「この先のことは、なんとも言えないけど...俺はね、明美のこと...考えない日はないと思うよ...だって...俺にとって、明美はホントに大事な人になったから...」
「私も、ずっと考えてると思う...禎行の事...」
「今日、この先...いつかは別れなきゃいけないし...ずっとこうして、一緒にいたいけど...いればいるほど、分かれが辛くなりそう...」
「分かれるとき、駅で違う電車に乗るんだよね...寂しすぎて悲しくて、泣いちゃいそう」
「家に帰らないわけにはいかないから...悲しいけどね」
「禎行と...離れたくないよ~」
「明美...」
俺の手を握りしめながら、明美は泣いていた
「ねえ明美、俺、明美を家まで送ってくよ」
「えっ私の家まで?」
「うん...駅で分かれるのが辛いなら、家の前で分かれるほうが、踏ん切りがつきやすいんじゃないかな」
「そうかな~でも、禎行大変じゃない?帰るの遠くなるし...」
「俺のことは、いいんだよ...明美のために、そうしたいって思ってるから...」
「...」
「俺は明美のために、そうしたい...そうすれば、家につくまで明美といられる」
「わかった...じゃあ、家まで送って...」
俺と明美は喫茶店を出た...手を握りあったまま駅に向かった
電車の中でも、明美は俺の手を離さなかった
明美の家に近い駅に着くと、明美の足が止まった
「明美?」
「家に着いたら、禎行と別れなきゃなんない...」
「それは...我慢してよ...明美に我慢してもらうしかない
ねっ、今生の別れになるんじゃないんだから...」
「わかってる...わかってるけど...」
「明美がそんなだと、俺...辛いよ」
「...」
「どうしてあげたらいいか、わかんない」
「ごめんなさい...私、我儘だね」
「...」
「家に着くまで一緒にいてくれるんだよね」
「うん...一緒だよ」
「じゃあ、行こ...」
明美は俺の手を引いて、家に向かった
ほどなく、明美の家に到着した
「送ってくれて、ありがとう...」
「送らせてくれて...ありがとう...また会えるから...その時まで...」
「禎行!」
そう言いながら、明美が俺に抱きついてきた
「明美...」
俺は明美を優しく抱いた
明美は俺の胸で泣いていた...何も言わずに
暫くの間、俺は明美を抱きしめた
「禎行...私のお願い...聞いてくれる?」
「なに?」
「一緒に家の中まで...来て...」
「家の...中?」
「お願い...」
「わかったよ...明美」
そう言うと、明美は俺から離れて
「禎行のこと、言ってくるから...ちょっと待ってて」
明美は意を決したように家の中に入った
行きがかりとはいえ、明美の家に来ることになるとは...
まあ、仕方ないか...こうしないと明美...泣き止みそうになかったし
それにしても、明美と俺って...まさかこんな仲になるなんて...
ほんの数時間前まで、俺は明美に、なんの恋愛感情も持ってなかったのに...
潜在意識なのかな...こんなに明美のこと好きになるなんて...
明美もおんなじだ...俺のこと、すごく好きになってくれてる...
別れが辛いからって、明美の家まで送ってきて、それどころか家の中にまで...
高校卒業間際で、俺にもホントの春がやってきた...のかな
こんな事、二度とないかも...
玄関ドアが開いて、明美が出てきた
「禎行...入って」
「...」
「大丈夫だから...中に入って...」
「わ、わかった」
明美に言われた通り、俺は家の中に入った
中に入ると明美と、明美の両親がいた
「松下くん...私の父と母です...」
「こんにちは、はじめまして...松下です」
「お父さん、お母さん...松下くん」
「こんにちは...松下さん...はじめまして」
「さあ、上がって...」
「はい...おじゃまします」
俺は居間に通された
明美の両親の前に、俺と明美が座った
「今日はよく来てくれたわね...」
「すいません...突然お邪魔して...」
「明美から聞きましたよ...将来を約束したんですって?」
「...」
俺は耳を疑った...将来を約束?俺と...明美が?
俺の横に座ってる明美を見ると、俺に向かって手を合わせてきた
言葉を発しないで何かを言っていた...その口の動きは、ごめんなさい...だった
「明美から聞いて、びっくりしたの...あなたたち、いつからのお付き合い?」
「私たち、高2の夏に出会って...付き合い始めたの...」
「二年経ってないよな...」
俺以外のところで話が進んでる...これは明美の意図する展開...なんだろうか
俺は...どうすればいいんだろう...明美のために...俺は...
「将来を約束したっていっても、明美はこれから大学だろ?」
「もちろん大学は卒業するよ...」
「結婚は、その後ってことだよね...」
「松下さん...進学?」
「いえ、僕は就職です...市内の会社に...だから、早くて4年後...です」
「二人とも、もうすぐ卒業でしょ...高校二年の夏から付き合って1年半...
その間に将来の約束するくらい...進展したのね...あなたたち」
「安心して...私たち学生らしいお付き合いしてるから...未成年だし...ホントだよ」
「分かった...明美の言う事だから信用する」
「あの...僕の話、聞いていただけますか...」
俺のかしこまった話し方に、明美は驚きを隠せなかった
「実は...」
話し出そうとすると、話を制止するように、明美が俺の手を掴み首を降った
俺は明美に微笑みながら言った
「大丈夫だよ...」
「どうしたの?なにか訳あり?」
「僕と明美さんが出会ったのは、さっきも話に出ましたが、高2の夏です...
明美さんと僕は、市内の漫画サークルに入っていて、集会での出会いでした...」
「そういえば、明美はよく漫画仲間の集会に行ってたよね」
「本当のことを言うと...僕と明美さんが心を通じ合わせられたのは...ほんの数時間前なんです」
「それ、どういうこと?」
「数時間前の、明美さんが僕に言った一言が...二人がこうなる切っ掛けなんです」
「そうなの?明美」
明美は俯いたまま、頷いた
「そんなんじゃ、将来を約束するなんて事できないんじゃない?」
「1年半の間に、僕と明美さんの間には、サークル活動っていう繋がりがありました...
そのサークルの会報でで好きな漫画のことを報告したり、描いたり...個人的な主張をしてたんです...他にも肉筆回覧誌を作ってみんなで読んで、感想を言い合ったり、会報に批評を書いたりしてました...それは今でも続いています...」
「そういえば夜遅くまで、描いてたよね明美...」
「
離れ際に微笑むと、明美も笑顔を返してくれた
「禎行と別れるの...辛いかも...」
「一緒にいられるだけ、いてもいいんだよ...時間の許す限り...明美の気持ちに任せるから」
「禎行のその優しさが...私を辛くさせるの...」
「じゃあ、もっと邪険にしたほうがいい?って...そんなことできるわけない」

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